経験と勘を蓄積する仕組みをつくる

「基本」がなければ「応用」がないのと同じように、セラピストの仕事においてもマニュアルがあると考えます。

経験者と新卒者では、対象者の動作を観察しても、解釈に違いが生まれます。

これは、蓄積されている経験・勘によるところが大きいと考えます。

大切なのは、自分なりに基本となるマニュアルをつくり、具体化する仕組みを作ることです。

「立位姿勢」を具体例に考えていきます。

「立位姿勢の観察」から考える

立位姿勢の観察は、日々の臨床においても繰り返される評価の一つです。

観察される情報から、いかに多くの仮説を挙げられるかがセラピーを進めていく上で大事です。

とはいえ、仮説をあげるにも基本が大切と考えます。

・「なんとなく不安定にみえる」
・「転びそうにみえる」
・「立っているのが怖そう」

このように、セラピストが考える理由を説明するために基本を知ることが大切です。

「最適な立位姿勢」を知る

立位姿勢を観察したとき、アライメントを確認しましょう。

・前額面:「左右側屈、内外転」
・矢状面:「屈曲伸展」
・水平面:「回旋・内外旋」

各アライメントの位置関係の整合性を確認しながら進めていきます。

次に、筋活動を確認します。

・アウターorインナー
・左右差
・低緊張or過緊張
立位姿勢はエネルギー消費は少なく、多くの筋活動を必要としません。
多くのケースの筋活動を繰り返し評価していくと、最適な粘弾性や筋緊張の幅を知ることができます。

「支持基底面と感覚」を知る

立位姿勢は、床面と接している足底面が唯一の支持基底面です。

足底面から抗重力活動のための、感覚情報が提供されています。

メカノレセプターの分布を知っておくことが大切です。

足部内反や外反母趾などの変形が観察される場合、「単に接地していない」というだけでなく、「感覚情報を受け取りにくい足部」となっている可能性があります。

「安定性限界と支持基底面」を知る

立位姿勢でどのくらい安全に重心移動ができるでしょうか。

「安定性限界」を知り、理想的な円錐形の移動ができているでしょうか。

転倒を予防し、安全にバランス評価をすすめる上で大切な基本です。

「一歩踏み出す、歩行開始」を知る

立位姿勢の観察から「歩行」に移行するために大切な知識です。

多くの片麻痺患者さんは、非麻痺側より一歩を踏み出し、後足部荷重が苦手です。

「歩行開始」に転倒の危険がある場合、立位姿勢からも共通した課題があることが多いです。

こちらも基本としておさえておきましょう。

【立位姿勢の観察】の基本

・アライメントと筋活動
・支持基底面と感覚
・安定性限界
・歩行開始の圧中心

最低限知っておくべき基本をあげました。

まとめ

本日は、経験と勘を蓄積する仕組みをつくるというテーマで書きました。

マニュアルや仕組みができれば、問題点や課題を発見し、改善にむけて実行するだけです。

自分なりの知見を積み上げ、1週間・1ヶ月前より1つでも新たな視点で観察できるようアップデートし続けると精度の高いセラピーにつながるはずです。

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.Anne Shumway-Cook, Marjorie H. Woollacott,  Motor Control: Translating Research Into Clinical Practice.Lippincott Williams & Wilkins, 2007

2.Mario Bizzini. Sensomotorische Rehabilitation nach Beinverletzungen: mit Fallbeispielen in allenHeilungsstadien.Georg Thieme Verlag.2000

3.Fay B Horak.Postural orientation and equilibrium: what do we need to know about neural control of balance to prevent falls?.Age Ageing.2006

4.Jean-Michel Viton,et al. Asymmetry of gait initiation in patients with unilateral knee arthritis.Arch Phys Med Rehabil. 2000 Feb;81(2):194-200.