片麻痺患者の運動学習

運動技能は、運動目標を計画し実行する能力です。

この運動技能の上達していく過程が運動学習であります。

運動学習の原則は、練習量に依存する、ということに異論はないかと思います。

つまり「たくさん練習すれば上達する」はず、ですが片麻痺患者さんはどうでしょうか。

・効果が持続しにくい
・疲れてしまい十分な量ができない
・練習しても上達しない

なかなかセオリー通りにうまくいかないことも多いかと思います。

片麻痺患者の運動学習を考えると、その方の運動機能や病変の程度、課題の選定など、多くの要因が影響してくるかと思います。

今回は、運動学習について予測的制御の観点で考えていきます。

予測的制御の観点

報告ではこのように言われています。

that patients did not have a learning deficit per se but weakness-related slowness to develop the required force to implement anticipatory control.
患者はそれ自体が学習障害ではなく、力の弱さに関連して、予測的制御を実行するために必要な力を身につけるのが遅いと結論づけた。

このメッセージは、臨床においては非常に大切だと感じます。

力の弱さに加えて、遅れについても考慮しなければなりません。

例えば、二足直立姿勢から麻痺側下肢へ荷重をかけます。

通常であれば、足底の荷重感覚を知覚し、足部・膝・股関節・体幹と荷重応答に伴い筋肉が活性化していきます。

しかしながら、患者さんは荷重に伴い、体幹の傾きや股関節の動揺などの不安定性を示します。

この場合、やみくもに練習量をふやすことでは、なかなか改善が難しいです。

力の弱さがどこにあるのかを探し(必要であればサポートし)、患者さんが適応できる速度で行う必要があります。

学習障害があるように思える患者さんは、力の弱さ・遅れ(予測的制御の観点)を細かく分析してみましょう。

目標・動機・意図の共有

目標・動機・意図を共有することも大切です。

「歩けるようになりたい」より「歩いて〇〇がしたい」を共有できると目標が具体化します。

リハビリ環境で歩けるようになっても、患者さんの願いに届いていなければ目標達成とは言えないです。

 

この目標・動機・意図は、よりリアルである必要があります。

「3歳の孫を抱っこしたい」「ショベルカーにのって運転したい」「家の中は裸足で歩きたい」
などなど

リアルな目標・動機・意図は、セラピーを具体化してくれます。

セラピーが具体化すると、運動学習を促進するための課題や環境がみえてきます。

 

まずは、リアルな目標・動機・意図を共有することが、いいセラピーをするための条件かと思います。

まとめ

本日は、片麻痺患者の運動学習について予測的制御の観点で考えました。

片麻痺患者さんの筋収縮の弱さと遅れを丁寧に分析していくのが運動学習には大切かと思います。

 

 

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

 

 

References

1.John W. Krakauer,Motor learning: its relevance to stroke recovery and neurorehabilitation.Current Opinion in Neurology.2006