運動スキルと大脳皮質の可塑性

大脳皮質のネットワークは複雑です。

脳卒中により中枢神経系に損傷を受けると様々な感覚・運動領域に機能的な変化が生じます。

・細かな動きのコントロールが難しい
・立ち上がることが大変
・動きの感覚がわかりにくい

これらの感覚運動の問題解決には、単に動きの反復練習を繰り返すことが最善とは言えません。

運動課題を構成する神経結合を理解し、最適なネットワークの再編成を促すことが重要と考えます。

はじめに、大脳皮質のネットワークについて確認します。

大脳皮質のネットワーク

大脳皮質のネットワーク[1]が示されています。

まずは、ネットワークは「複雑」であることを受け入れることが大切と考えます。

そして、リハビリは個別性の評価が重要であると考えます。

①:患者Aさんと患者Bさんの、ネットワークの構築プロセスは異なる。
②:患者Aさんと患者Bさんの、病変(大きさ、部位、経過 etc…)は異なる。

①、②を考えると、機能回復の過程にも違いがあることが考えられます。

難しさもありますが、一人ひとりに合わせた運動課題、環境選択をすることが大切と考えます。

運動表現のモザイクパターン

当時、この報告[2]を読んだとき、衝撃を受けたのを覚えています。

なぜなら、それまでは「脳卒中病変により脳内のホムンクルス(手と顔が大きなヒトのようなもの)対応した症状がでる」と考えていました。

ですが、臨床では同じような病変にもかかわらず、麻痺や運動パターンは様々です。

症状は似ていても、全く同じではありません。

当時は、それがなぜなのかよくわかりませんでした。

一つの要因として、運動表現は「肩」「肘」「手」と重なり合うようなパターンで運動出力がなされていることは重要な視点です。

皮質の機能的なリモデリング

皮質の機能的なリモデリング[3]が示されています。

脳卒中後の機能回復を考えると、経験に依存することが重要であることは否定できません。

そして、どのような課題を選択肢、どのような感覚運動を経験するかを考えなければなりません。

課題の問題点を整理し、目標を共有し、解決までの期間を設定し取り組むことが大切と言えます。

共有する目標は、日常生活に直結することが良いと思います。

シナプスの可塑性(長期と短期)

運動学習におけるシナプスの可塑性[2]が示されています。

セラピーにおいて、即時効果を出し、さらに達成した課題を日常生活に汎化させ、長期効果につなげていくことが大切です。

また、スキル依存の重要性について示されています。

例えば、片麻痺の上肢機能を考えます。

臨床上、動きの反復練習のみでは、日常生活に汎化しにくいことを経験します。

大切なのは、機能の改善によって得られる運動スキルが、日常生活の変化につながることです。

小さな変化を見逃さず、共有することが重要と考えます。

まとめ

本日は運動スキルと大脳皮質の可塑性というテーマで書きました。

脳卒中後リハビリを考える上で、背景にある可塑性の必須の知見です。

複雑であることを理解し、一人ひとり丁寧に分析していくことが重要と考えます。

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.Randolph J Nudo.Postinfarct cortical plasticity and behavioral recovery.Stroke.2007

2.Randolph J Nudo.Functional and structural plasticity in motor cortex: implications for stroke recovery.Phys Med RehabilClin N Am. 2003

3.Randolph J Nudo et al. Role of adaptive plasticity in recovery of function after damage to motor cortex.Muscle Nerve.2001

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