「腕が重たくて歩きにくい」その理由を考える
患者さんの主訴を聴取することはセラピーを進めていく上で最も大切なことの一つです。
セラピストに求められるのは、セラピーを通して問題解決することにあります。
片麻痺を呈する患者さんから、上記のような訴えを聞くことがあります。
・過緊張による上肢の重さ:「動きに伴い徐々に重たくなる」
低緊張例は、常に上肢の重さを訴えることが多く、過緊張例は運動に伴う過活動にあわせて重さを訴えることが多いと考えます。
いずれも、「重たさ」を主訴としますが、理由には違いがあると言えます。
今回は、「腕が重たくて歩きにくい」その理由を考えていきます。
リズミカルな歩行パターンが難しくなる?
リズミカルな歩行パターンを生成する上で、手足からの感覚フィードバックが脊髄へ到達する必要があります。
当然、麻痺側上肢からのフィードバックもCPGの出力の形成には重要といえます。
「肘が曲がって伸びない」
「力が入らず腕を振るのが難しい」
このような場合、屈筋−伸筋の制御は働きにくくなっていることが考えられます。
また、CPG制御の同側・両側の相互接続から、四肢の協調性へ影響する可能性があります。
つまり、麻痺側上肢は歩行制御に貢献していることからも、「歩きにくさ」につながる可能性は十分考えられます。
高い位置でCOMを保持することが難しくなる?
正常歩行時のCOMの変位は、図Aのような軌跡となります。
例えば、上肢に弛緩性麻痺を呈した場合を考えてみます。
体重60kgで片腕の重さは約4kgとなります。
近位筋の姿勢コントロールが不十分であれば、高い位置でのCOMの保持は難しく、非効率な歩行につながることが考えられます。
体幹前傾姿勢と下肢筋活動の関係
上肢屈筋の過活動により、体幹の伸展活動は制限されることがあります。
ここでは、正常歩行に比較し、体幹屈曲歩行は下肢筋活動が大きい傾向[3]と示されています。
つまり、より多くの筋活動を麻痺を呈する下肢に要求することになります。
下肢筋の活性化が不十分な場合、「歩きにくさ」につながる可能性があります。
まとめ
本日は、「腕が重たくて歩きにくい」その理由を考える、というテーマで書きました。
患者さんの主訴は、一人ひとり表現は様々です。
表現された訴えを解釈し、分析を深め、問題解決に結びつけることが大切と考えます。
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。
References
1.E Paul Zehr et al.Regulation of arm and leg movement during human locomotion.Neuroscientist.2004