【運動機能障害】痙縮に関与する脊髄下行システム

脳卒中後の片麻痺者は、姿勢保持や歩行、上肢機能にさまざまな制限が生じます。

・麻痺側上肢の過剰な屈曲活動
・麻痺側下肢の過剰な伸展活動

これらの現象は、臨床場面でも観察されことは多いかと思います。

筋肉は神経制御により調整されていることからも、痙縮の根底にある神経システムを理解することは重要と言えます。

はじめに、脊髄内の下行運動経路について確認しています。

脊髄内の下行性運動経路

主要な脊髄内の下行路は3つです。

・背側網様体脊髄路
・内側網様体脊髄路
・前庭脊髄路

これらシステムの興奮−抑制の相互作用によって、最適な筋緊張は調整されています。

外側皮質脊髄路(錐体路)は、随意運動の背景にあるシステムとして理解しやすいかと思います。

「痙縮」が観察される場合、個々のケースで病変部位は異なるかと思います。

例えば、脳卒中であれば「皮質」、脊髄損傷であれば「脊髄」となります。

いずれのケースにおいても、神経システムの相互作用を捉えることが重要と言えます。

抑制性および興奮性の主要な下行系

抑制性および興奮性の主要な下行系[1]について示されています。

各経路が抑制・興奮いずれに作用するかをおさえておきましょう。

ここでは、さらに下降路の興奮・抑制を調整するシステムについて理解しておきましょう。

皮質−脳幹−脊髄の相互作用

各システムに関連するエリアを理解し、観察・分析の整合性を捉えることにつなげましょう。

臨床経験の一考察

これらシステムの相互作用を捉え、臨床経験から考えてみました。

体幹の不安定性が強く、頭部を大きく揺らしながら歩行しているケースがいました。

麻痺側下肢は、過剰な伸筋活動によるトータルパターンの支持となっていました。

ここから、背側網様体脊髄路の働きは弱く、前庭脊髄路の働きを強める代償戦略となっていた可能性が考えられました。

痙縮に関する運動障害の3つのメカニズム

「痙縮」に関する運動障害の3つのメカニズム[2]が示されています。

・麻痺(Paresis)
・拘縮(Contracture)
・筋過活動(Muscle overactivity)

3つの関連性を捉えることが重要です。

脳卒中後の麻痺により、不動を余儀なくされると軟部組織の短縮が生じます。

また、「痙縮」は、時間経過とともに出現することからも、軟部組織の柔軟性低下、筋肉の短縮には早期から管理が必要です。

経過とともに、筋過活動を引き起こし、さらなる拘縮が、過活動を助長することにならないようにすることが重要と言えます。

これらのループを考えつつ、セラピーを通して、最適な感覚運動経験を提供できるかがポイントと考えます。

まとめ

本日は、【運動機能障害】痙縮に関与する脊髄下行システムについて書きました。

臨床で観察されることの多い手足の突っ張り「痙縮」は、セラピーもおいても課題となることが多いです。

神経システムの理解を深めることは、臨床推論の質を高め、適切なアプローチの一助となると考えます。

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.Michael P. Barnes, Garth R. Johnson.Upper Motor Neurone Syndrome and Spasticity: Clinical Management and Neurophysiology.Cambridge University Press, 2001,pp12-19

2.Jean-Michel Gracies.Pathophysiology of spastic paresis. II: Emergence of muscle overactivity.Muscle Nerve.2005