【片麻痺歩行の特徴】 立位姿勢と歩行開始
片麻痺者の歩行を観察するとき、「一歩目をどちらから出すか」は大切なポイントです。
立位姿勢から歩行開始のとき、どちらの支持脚を選択しているでしょうか?
臨床経験では、麻痺側からの一歩目を選択する方が多いです。
なぜなら、非麻痺側から一歩目をだすことは不安定な支持脚を選択することになるからです。
「立位姿勢から歩行開始」の特徴を捉えることは、その後の歩行分析を進める上で多くのヒントを得られます。
はじめに、歩行の準備と開始について確認します。
歩行の準備と開始
二足直立の効率的な姿勢保持には、中枢神経系の制御の支えがなければ成り立ちません。
健常者であれば、特に意識を向けることはないかもしれません。
例えば、「自分はどちらから一歩目を選択するか」知っていますか?
意識することなく選択している自分の一歩目について考えてみましょう。
ちなみに、僕は右足から一歩を出します(出すことが多い)。
試しに左足から一歩を出すと「何だか変な感じ」です。
僕の場合、過去に右足を手術した経験があるため(今は問題なし)、左下肢を支持脚として(中枢神経が)選択しているのかな、と自己分析しています。
大脳基底核の入出力系
片麻痺患者さんの一歩目を観察したら、次はなぜそちらを選択したか分析しましょう。
一歩目に先行する近位筋の弱さや遅れにより、姿勢コントロールが不十分なケース。
転倒経験などがあり恐怖心が強く、情動面の影響を強く受けているケース。
麻痺側身体の気づきが乏しく、転倒の危険があるにも関わらず、行動してしまうこケース。
立位姿勢から歩行開始の背景にある中枢神経系をネットワークで捉えつつ現象を解釈できると分析が深まります。
最適な立位姿勢
最適な立位姿勢は、エネルギー消費が少なく、効率的ですぐに動き出せます。
垂直を維持するための筋活動は最小限である[3]と示されています。
歩行の一歩目に転倒の危険があるケースは、立位姿勢から分析をはじめましょう。
・垂直性
・対称性
・不安定
【筋活動】
・低緊張
・過緊張
立位姿勢に過剰な努力を要している場合は、【アライメント】と【筋活動】から検証していくと歩行分析が深まります。
歩行開始の圧中心の変位
歩行開始の圧中心の変位[4]が示されています。
この軌跡は、臨床的にも重要と言えます。
後足部へ荷重できる足部機能と後足部荷重に伴う骨盤後傾(相対的な股関節伸展)がポイントです。
片麻痺患者さんでは、後足部の荷重支持が難しいことを多く経験します。
不安定な支持脚での一歩目を観察するとき、圧中心はどこまでうまくいっているか、どこで途切れるかなどはポイントになります。
足底のメカノレセプター
足底面の固有受容器メカノレセプターは、圧分布の軌跡をたどるように分布していることがわかります。
まるで、センサーのように圧中心を制御しているかのようです。
僕らは、足底面に小さな石やトゲがあればすぐに感じ取ります。
足底面は敏感なセンサーとして働いていると言えます。
セラピーにおいては、これらのセンサーが働きやすい足部のコンディションを提供することが大切です。
・母趾側は荷重できるか
・足趾の伸展はできるか
関節の運動制限や皮膚の柔軟性など、感覚への影響を考えながらセラピー展開していくことが大切と言えます。
股関節の運動に先行する腹横筋
股関節の運動に先行する腹横筋の働き[6]が示されています。
足部からの荷重が股関節・体幹に運動連鎖として働くことは大切です。
片麻痺患者さんでは、立位姿勢は体幹前傾を強め、一歩目で骨盤のswayが強まり転倒につながることがあります。
立位姿勢において、骨盤前後傾がスムーズに動けるか、後足部荷重に下部体幹の働くか、このあたりは歩行の開始と準備に大切なポイントかと思います。
まとめ
本日は、【片麻痺歩行の特徴】 立位姿勢と歩行開始というテーマでまとめました。
片麻痺歩行の観察分析は、患者さんへの労力を最小限とし、効率的に進めるべきです。
また、歩行機能を効率的・効果的に改善するために、一人ひとりの問題となる現象を捉えることが大切と考えます。
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。
References
2.高草木 薫,大脳基底核による運動の制御.臨床神経学.2009