歩行における補助器具の選択を考える

歩行器や杖などの補助器具は、安全に歩くため、長距離を歩くため、歩行を良くするためなど、よく利用されます。

身体の機能に合わせて適切な補助器具を選択することが大切です。

ただ、一人ひとりにあわせて最適な補助器具の選択に迷うことも多いです。

・安定性の高い補助器具を選択する
・転ばない補助器具を選択する
・安心できる補助器具を選択する

どれも間違いではありません。

歩行の不安定性が強いケースは、安定性の高いものを選択するかと思います。

しかし、常に安定性の高いものが本当によいのでしょうか。

「機能維持・回復のために補助器具の安定性は最小限としたい」と考えることもできます。

できるだけ下肢体幹筋は使ったほうが良いですよね。

本日は、歩行における補助器具の選択について考えていきます。

歩行における補助器具の選択

脊髄損傷者を対象とした平行棒内歩行のEMG、関節角度の比較が示されています。平行棒を離したときに正常な歩行パターンが出現した[1]と示されています。

平行棒は構造的に安定性が高いですよね。

その平行棒を利用することで、下肢の筋活動が制限されてしまうこともあるのです。

「補助器具は安定性が高ければ良い」というわけではなさそうです。

・過剰代償は(本来あるべき)下肢機能を制限することがある
・歩行能力の制限にならない補助器具を選択すること

これらはポイントかと思います。

歩行の機能回復を最大限に高めること

補助器具の特性を知りつつ、最適なものを選択することが有益ですよね。

ただ、補助器具はあくまで「補助」なので、「歩行」について知っておく必要があります。

・麻痺側下肢の最大荷重
・股関節の伸展
・屈筋と伸筋の切り替え

歩行の機能回復を高める3つのポイントをおさえておきましょう。

・杖を力いっぱい握っている
・杖に寄りかかり傾いた姿勢
・杖に寄りかかり歩いている

このようなケースに出会ったら、セラピーでは最高機能にチャレンジすることが大切です。

十分な下肢機能があるにもかかわらず補助器具に依存していないかチェックしましょう。

もちろんチャレンジするには患者さんとの信頼関係がなければなりません。

転倒を防ぐ安全な環境設定も大前提です。

杖の使用の観察ポイント

杖の使用の観察ポイントをあげます。

杖に多く依存しているときに、よくある姿勢観察ポイントを示しました。

不安定だったバランスが少しずつ安定していけば、回復に合わせて補助器具を見直すことも大切です。

身体の回復過程に合わせた、最適な補助器具の選択していきましょう。

まとめ

本日は、歩行における補助器具の選択を考えました。

歩行のための補助器具は数多くあり、セラピストはその中で常に最適なものを選択しなければなりません。

補助器具による利点・欠点を知りつつ、機能回復につながる選択ができると良いかと思います。

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.Hugues Barbeau.Locomotor Training in Neurorehabilitation: Emerging Rehabilitation Concepts.Neurorehabilitation and Neural Repair, 2003