【脳卒中後の手】 把持動作の手の構え

脳卒中後患者さんは把持動作に難しさを抱え、手指の操作性に制限につながっているケースがあります。

・手を強く握ってしまう
・指が開きにくい
・つかみ損ねてしまう

把持動作やつまみ動作の課題は、日常生活の制限に影響することも多いです。

これらの脳卒中後の把持動作の手の構えについて考えていきます。

把持動作の運動学

把持動作の動作分析を進めるためには、正常運動の理解が大切です。

僕たちは、日常生活でさまざまなものを把持し、つまみ、操作します。

ものに手を伸ばして把持するまでの時間は一瞬です。

さらに、特に意識することなく手を使用しているかと思います。

このとき、手の構えはどのようになっているでしょうか。

・指の開くタイミング
・親指と人差指の距離(A)
・対象物によるAの変化

把持動作の観察に、上記3点はポイントとになるかと思います。

【把持動作】予測的な運動制御

把持動作のセラピーにおいて、どのような物品選択をしているでしょうか。

予測的な運動制御の観点で考えるとセラピー展開を工夫できるかと思います。

同じような把持動作の練習でも、物品から(患者さん自身が)感じとる意図、意味、目的など考慮して使用する物品選択をすると良いと思います。

例えば、「箸」と「スプーン・フォーク」。

日本人は「箸」は日常です。

ですが欧米人は「箸」よりも「スプーン・フォーク」が日常でしょう。

他に、もともと職業などで使っていた道具、家事操作などで使用したものなど、馴染みのある物とそうでないものとでは、モチベーションにも違いが生まれるかもしれません。

患者さん自身の物品から受ける感覚・知覚・認知には個別性があるはずです。

この点は、セラピー展開で考慮すべき点と考えます。

パワーグリップと精緻グリップ

代表的な2つの把持動作が示されています。

脳卒中後の手を考えると、パワーグリップはできるけれど、精緻グリップに難しさを抱えるケースが多いかと思います。

精緻グリップのためには、母指の分離・対立運動、示指の選択性、手内筋の粘弾性、立体認知覚などの機能が求められるかと思います。

把持動作の神経システム

把持動作の神経システムについての過去記事です。

【脳卒中後の手】 把持動作の神経システムを考える

 

気になる方は読んでみてください。

把持動作に視覚と体性感覚の統合は重要と感じます。

まとめ

本日は、【脳卒中後の手】 把持動作の手の構えというテーマで書きました。

臨床現場では、手の使いにくさや指の開きにくさなど、脳卒中後の手のニーズは高いかと思います。

「手」は立位バランスや歩行能力の影響を受けるため(「バランスが不安定で手が硬くなってしまうなど」)、全身の観察分析が不可欠なのが実際です。

手の回復に影響する因子を一つずつ分析し、セラピーを進めていけると良いかと思います。

 

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.Umberto Castiello.The neuroscience of grasping.Nat Rev Neurosci. 2005

2.Caterina Ansuini  et al.An object for an action, the same object for other actions: effects on hand shaping.Exp Brain Res. 2008

3.J. R. Napier,The prehensile movements of the human hand.The Journal of bone and joint surgery. 1956