【脳卒中後の手】 把持動作の神経システムを考える
脳卒中後患者さんは把持動作に難しさを抱え、手指の操作性に制限につながっているケースがあります。
・ボタンをうまくつけれない
・うまく字が書けない
把持動作やつまみ動作の課題は、日常生活の制限に影響することも多いです。
これらの脳卒中後の手について神経システムの視点で考えていきます。
【リーチとグラスプ】視覚情報の流れ
正常に手を伸ばし把持するためには視覚と体性感覚が不可欠[1]であると示されています。
視覚から、対象物の位置、距離感、形状、大きさ、質感などの情報が提供されます。
成人であれば、過去の経験に基づき対象物の特徴、重さ、操作感、使用感など学習された感覚運動経験が想起されます。
これらの情報をもとに、動作の準備が調整され、多様な対象物にあわせて手の構えを変化させ課題を達成することができます。
リーチや把持動作の課題達成には、自分の身体の大きさ、位置関係、力加減など体性感覚が貢献します。
視覚と体性感覚に不一致があれば、得られた感覚運動フィードバックから動作は再調整されます。
・眼球運動を支える頭頸部の姿勢コントロールは最適か
・頭頸部の正中性を支える体幹コントロールは最適か
脳卒中後患者さんにおいて、視覚情報を得るために姿勢・バランスの視点は大切と考えます。
【神経システム】分節的な手指運動の制御
着替えのとき、片手操作でボタンをつまみ、穴に通す。
実際にやってみるとどうでしょう。
僕らは手元を見なくても、数十秒でできますし、練習すればすぐに上達するかと思います。
脳卒中後患者さんはどうでしょうか。
・視覚依存の傾向
・多くの時間を要す
個々の動作のエラーを捉え、どのような情報を提供することが最適かを考えていきましょう。
手指運動を神経システムの視点で捉えると、効率的に課題を達成するヒントが見つかる可能性があります。
姿勢制御と乳児の把持動作
正常発達の理解は、中枢神経系の成熟を理解することにつながります。
つまり、中枢神経系に損傷を受ける脳卒中者の理解に役立ちます。
成人の把持動作には、近位筋の制御が重要視されることが多いかと思います。
発達過程から考えると、近位筋の制御を高めるために遠位筋の活性化を図るという視点も大切であることが考えられます。
ただ、介入手順を明確に示すものではありません。
あくまで、考え方の引き出しとして知っておくと、セラピーのヒントになると考えます。
パワーグリップと精緻グリップ
対象物の形状、大きさにあわせて、手の握り・つまみは変化します。
ここは正常運動の理解が大切と考えます。
普段の手の運動を意識化してみるといいです。
非利き手で試してみてもいいかもしれません。
・箸を持つとき
・スプーンを持つとき
・ペットボトルを持つとき
まとめ
本日は、【脳卒中後の手】 把持動作の神経システムを考えるというテーマで書きました。
動作を支える神経システムの理解は、セラピーを効率的に展開するヒントとなります。
難しさもありますが、個々のケースにあわせて考察していくことが大切と考えます。
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。
References
2.J. R. Napier,The prehensile movements of the human hand.The Journal of bone and joint surgery. 1956