上肢挙上動作と肩甲骨周囲の筋活動パターン
脳卒中後の上肢挙上は制限される動作の一つです。
・「服を着るとき肩が痛い」
・「肩が重くて手を伸ばせない」
上肢挙上動作には肩甲骨の動的安定性が必須となります。
特に筋肉による制御が重要となります。
上肢挙上に制限のある片麻痺者の肩甲骨周囲筋はどのようなコンディションでしょうか。
・前鋸筋や僧帽筋中下部の不活性
・大胸筋・上腕二頭筋の過活動
麻痺による粘弾性の低さや過活動により経過とともに複雑となります。
まずは、上肢挙上角度に応じて変化する筋活動の組み合わせを理解することが大切です。
【上肢挙上】肩甲骨周囲筋の活性化パターン
上肢挙上120°までの筋活性化の組み合わせ[1]が示されています。
・回転軸の移動
ここは上肢挙上と肩甲骨の動的安定を考える上で重要な視点です。
患者さんでは、前鋸筋の弱化により翼状肩甲を呈していたり、僧帽筋上部の過活動により早期に上方回旋が起こるケースを経験しました。
動作開始前のアライメント観察からも挙上動作の分析に役立つ情報を得ることができます。
上肢挙上120°以降の筋活性化の組み合わせ[1]が示されています。
前鋸筋・僧帽筋中下部の不活性により、肩甲骨上方回旋に制限され、痛みにつながるケースも経験します。
単一の筋肉でみていくよりも、筋群の組み合わせでみていく視点が大切と考えます。
【上肢挙上】ローテーターカフの役割
ローテーターカフが適切に機能していなければ、上腕骨頭のコントロールは不安定となります。
ローテーターカフは、内在筋として動きの安定に貢献します。
体幹で言う、腹横筋のような役割です。
動的な運動開始前に、上腕骨頭のコントロールを確認することは大切と言えます。
脳卒中後の肩甲骨の特徴
脳卒中後の肩甲骨のセラピーは難しいです。
・痛みを誘発しやすい
・体幹の姿勢に影響を受ける
・視覚の影響を受けやすい
・屈筋の過活動の影響
上記が考えられる要因かと思います。
臨床経験では、これら影響をひとつずつ丁寧に分析してくことが大切と感じます。
例えば、座位で体幹の非麻痺側への傾きが強い場合、麻痺側の坐骨支持は支持基底面としての機能していないことがあります。
この場合、坐骨ー体幹の抗重力活動は、肩甲骨へ伝わりにくく、上肢を挙上するための運動連鎖は働きにくなります。
まとめ
上肢挙上動作と肩甲骨周囲の筋活動パターンというテーマで書きました。
上肢挙上角度と肩甲骨の動的安定を考えることは、セラピーを展開していく上で大切な視点かと思います。
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。
References
2.S A Hess.Functional stability of the glenohumeral joint.Man Ther. 2000