早期荷重練習が大切な理由
安静度の制限や術後管理により、安静を余儀なくされることがあります。
・筋力低下
・体力低下
これらの陰性兆候を予防するために、早期荷重が重要であるのは言うまでもありません。
一言で「廃用」と表現されることもあるかもしれません。
今回は一歩踏み込んでセラピストにとって重要な「筋肉に起こる変化」にポイントを絞って書いていきます。
最適な立位姿勢
最適な立位姿勢に活動する筋肉が示されています。
立位姿勢の保持には、エネルギー効率のよい筋活動であり、大きな努力を必要としません。
代表的な姿勢筋のヒラメ筋は、収縮速度は遅いですが、ミオグロビン含量が高く、疲労抵抗性が高いです。
短時間の立位姿勢の保持に疲労を訴える患者さんは、これら筋線維の変化についても考える必要があります。
活動量の減少による骨格筋の萎縮の程度に影響する主な要因
脳卒中後リハビリの対象者は、活動量が落ちる方がほとんどかと思います。
骨格筋の萎縮の程度に影響する因子[2]の理解は重要です。
骨格筋の萎縮を最小限にする関わりは、早期から開始する必要があります。
早期荷重練習ができれば良いですが、実際はできないケースも多く経験します。
仮に荷重練習ができなくても、一歩先を考え、ベッド環境で出来ることを模索します。
最適な筋肉の長さを確保し、可能な範囲で筋活動(特に下肢)を活性化し、荷重練習に備えることが大切と考えます。
筋線維タイプの変化
筋線維タイプの変化[3]が示されています。
抗重力活動の不足により、遅筋から速筋へ変化することで疲労しやすくなることが考えられます。
「筋力低下」と表現される背景に、線維自体の変化が生じていることは大切な視点です。
リハビリにおいても、筋線維の特性にあわせてプログラムを工夫する必要があるかもしれません。
姿勢保持に疲労が強ければ、無理に歩行練習を進めるよりも、立位保持時間の延長(持久性)のような姿勢筋を強化するプログラムを優先すべきことがあると考えます。
筋線維の動員順序
筋線維には動員順序は、臨床においても大切な視点です。
Hennemanのサイズ原理からも、運動ニューロンの小さいユニットが最初に動員される[2]ことが示されています。
タイプⅡの強い筋活動を発揮する前に、タイプⅠの姿勢筋の動員が重要であることと考えることができます。
課題によって求められる筋肉の働きは異なりますが、筋線維の特性を捉えることは推論をしていく上で大切な視点と考えます。
筋肉の長さと張力の関係
早期荷重練習が可能になったら、筋活動が発揮できるかが大切です。
脳卒中後リハビリにおいて、単に下肢に荷重をかけても、筋収縮が十分に発揮できないことも多いかと思います。
「力が抜けてしまう」
「踏ん張りがきかない」
筋肉を触診し、位置を修正する、長さを変える、モールドするなど、ハンドリングによるアシストで筋収縮を発揮しやすくなるポジティブな反応も経験します。
個々のケースで筋肉の状態は異なるため、丁寧な触診が大切です。
筋肉の長さと張力の関係を理解し、筋収縮が発揮しやすくなるようなアシストを提供することが重要と考えます。
まとめ
早期荷重練習が大切な理由を考えました。
荷重練習において、筋肉の働きが発揮できているかはセラピストにとって大事な視点です。
一人ひとりの筋肉の状態を丁寧に確認し、効率的・効果的な荷重練習を提供しましょう。
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。
References
2.AnneBruton.Muscle Plasticity: Response to training and detraining.Physiotherapy.2002
3.Wayne Scott et al.Human Skeletal Muscle Fiber Type Classifications.Phys Ther.2001