【片麻痺歩行】体幹前傾の影響
脳卒中後に片麻痺を呈する患者さんは、抗重力姿勢の保持が難しく、歩行に努力を必要とすることが少なくありません。
健常人の歩行は、体幹の中心が倒立振子のように支持脚に乗り上げ、効率的な歩行パターンを選択します。
一方、体幹前傾を呈する片麻痺患者さんは、疲れやすく、努力的であり、非効率な歩行パターンとなりやすい傾向にあります。
まず、立位バランス戦略について確認していきます。
片麻痺患者の立位バランス戦略
片麻痺患者さんは、真ん中の図のように股関節戦略でバランス保持をしていることが多いです。
体幹は前傾、腰部は伸展しており、上肢は屈曲し、頸部は過伸展を強めます。
さらに、体性感覚の乏しさにより視覚依存の傾向が強まれば、屈曲姿勢は助長されます。
片麻痺患者さんは、COMを低くすることで代償していることも多いです。
次に、COMと歩行の関係について確認します。
COMの変位の比較
各歩行条件でのCOMの変位の比較[2]が示されています。
【COMの垂直方向の変位】
・最も高い:Single stance
・最も低い:Double stance
正常歩行は、COMの垂直方向の変位は規則的で、エネルギー消費は制限されています。
非常に効率的です。
一方、歩幅の狭い歩行、下肢を屈曲させた歩行はどうでしょうか。
倒立振子によるエネルギー交換は生じにくく、推進に筋活動を多く必要とすることが想像できます。
片麻痺患者さんでは、左右差や非対称性により、側方へのswayも大きくなる可能性もあります。
正常歩行を理解し、歩行周期におけるCOMの変位を観察分析していくことが大切です。
身体質量中心と屈曲姿勢の関係
同じく歩行条件でのCOMの変位[3]が示されています。
正常>膝屈曲>膝+体幹屈曲
片麻痺歩行の観察分析では、下肢・体幹の関連性を捉えCOMを評価することが大切といえます。
COMを低くしている要因は、体幹自体の問題なのか、あるいは下肢の伸展が不十分によるものか、
セラピーを通して優先性の鑑別ができると良いかと思います。
屈曲姿勢と下肢筋活動の関係
健常人を対象とした報告では、屈曲姿勢であるほど下肢筋活動を多く必要とすること[3]が示されています。
前傾姿勢であるほど、歩行時の推進に下肢の筋活動を必要とします。
体幹前傾の片麻痺患者さんは、歩行により多くの下肢機能を要求されていると考えられます。
臨床的に、歩行時に体幹伸展をアシストすると下肢のリズミカルな運動が可能となることがあります。
COMを低くする戦略が、下肢機能を制限してしまう可能性があると考えられました。
まとめ
片麻痺歩行における体幹前傾の影響について考えました。
「体幹前傾」は臨床現場でよくみられる現象ですが、足部・股関節・上肢・手部など、四肢との関係性を考え要因を捉える視点が大切です。
COMの移動、下肢体幹の関係性を理解しつつ、丁寧な観察分析が必要と考えます。
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。