腹腔内圧を高める横隔膜と骨盤底筋
片麻痺患者さんのバランスと呼吸運動について考えます。
・座ってるのも大変
・立ち上がるときに息を止めてしまう
このような臨床像、一度は経験はあるかと思います。
・「楽に呼吸ができていない」
・「呼吸が乱れる」
・「呼吸が浅くなる」
体幹筋の弱さ/遅れによる不安定性や非麻痺側上下肢の過剰努力による非対称性によって、呼吸運動に影響がでているケースは多いのではないでしょうか。
つまり、バランスと呼吸運動の関連性を考えることは大切と言えます。
脊柱は構造的には不安定なため、筋肉による安定性が重要な役割を担います。
体幹の安定性を向上させるための運動プログラムは、筋の活性化、神経筋制御、静的安定化、動的安定化に焦点[1]を当てることがポイントです。
今回は、体幹の安定性に大切な腹圧を高める横隔膜と骨盤底筋について考えていきます。
骨盤底筋と腹横筋の同時収縮
「腹圧を高めると体幹の安定性にどんな影響があるか?」
この質問の答えはスライドを参照ください。
腹圧を高めるためには横隔膜をしっかり使って呼吸ができることがポイントです。
お腹を使って息を吸えると、吸気に伴ってお腹が膨らみます。
うまくできていないときは、吸気に伴って胸が大きく動いているケースが多いです。
「うまくできない」
「きちんとできているのかわからない」
「難しい」
簡単そうだけど意外と難しい、との声がよく聞かれます。
まずはバランスの影響が少ない背臥位から練習することがおすすめです。
その際、両膝関節を軽く曲げ、腰椎部がベッド面に接触するよう骨盤のアライメントを調整しましょう。
セラピストは、鼠径部やや上方の内腹斜筋(深部の腹横筋)を丁寧に触診し、うまく筋収縮ができているかフィードバックすることが大切です。
地味な運動なので、「これ本当に意味あるの?」と思うかもしれませんが、深層筋の働きなので地味であることが正解です。
腹腔内圧を高めることは、その後の静的・動的バランスを安定させるための準備となります。
まずは、背臥位で筋肉を活性化し、座位・立位とステップアップしてきましょう。
骨盤底筋
「骨盤底筋」はウィメンズヘルス領域で取り上げられることが多いですよね。
正直言うと、私は「骨盤底筋」についての解剖が結構曖昧でした。
というか苦手意識すらあります。
臨床場面で触診することを今まで経験していないのも一因かもしれません。
「大切なのは知ってるけど、筋肉がどうなっているか知らない」
腹横筋と同時収縮により体幹の安定性に貢献している以上、頭に入れておかなければならない基本的な知識です。
今回はそんな自分の備忘録としても解剖をきちんと確認しておこうと思いました。(すでに知っている方には特に有用ではないかと思います。)
ちなみにスライドは、頭側から眺めた骨盤のアングルで、上方が腰椎部、下方が恥骨部になります。
安静時の呼吸運動を評価しておく
ここまで、呼吸によって腹腔内圧を高めることが大切であることを述べました。
より効果的にセラピーを進めていくには、「安静時の呼吸運動を評価すること」が大切と考えます。
・呼吸周期[吸気/呼気]
・呼吸パターン[胸式/腹式]
・胸郭運動[左右差/上部-下部/前面-背面]
片麻痺患者さんを考える上で、要求される姿勢制御にあわせた呼吸運動の変化を捉えることは重要と考えます。
ただし、ここで考えているのは呼吸器・循環器疾患を持たない場合です。
呼吸運動の変化が、心不全や呼吸器合併症等の循環動態に起因するものであれば、最優先すべきはリスク管理となります。
重複障害を呈するケースは増えていますので、包括的に臨床像を捉えることが重要と考えます。
まとめ
今回は、体幹の安定性に大切な腹圧を高める横隔膜と骨盤底筋について考えました。
「バランスと呼吸運動の関連性」を丁寧に観察分析できれば、セラピーを展開する上での評価指標になりますね。
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。
References
1.Kellie C. Huxel Bliven et al.Core Stability Training for Injury Prevention.Sports Health. 2013
2.Akuthota V, Nadler SF.Core Strengthening.Arch Phys Med Rehabil.2004