【予測的姿勢制御】姿勢の神経システムを考える

脳卒中後の片麻痺者は、姿勢保持や歩行、上肢機能にさまざまな制限が生じます。

・運動によるバランスの乱れ
・努力的な姿勢保持
・上肢操作による姿勢の不安定性

上位運動ニューロン障害による姿勢運動の問題は、神経システムを捉える視点が大切です。

予測的姿勢調整の3つの目的から確認していきます。

予測的姿勢調整の3つの目的

予測的姿勢調整の3つの目的[1]が示されています。

手足を動かすことに伴う予測される不安定さを補うことで安定性を維持するのに役立っていると言えます。

自ら動くとき、中枢神経は結果を予測してくれているわけです。

自ら動き出すと姿勢が不安定となる方は、予測的な姿勢調整が不十分である可能性が考えられます。

姿勢制御プログラムと随意運動

姿勢制御プログラムと随意運動[2]の神経システムが示されています。

四肢の運動と体幹の安定の関係性
姿勢運動の分析に大切な視点です。
四肢の随意運動を評価するとき、体幹の傾き、揺れ、乱れを観察してみましょう。

姿勢による随意運動の変化

上肢挙上動作で考えてみます。

・姿勢(支持基底面)
背臥位(身体背面)→座位(殿部・足底)→立位(足底)

支持基底面が狭くなるほど、上肢挙上に対する姿勢制御の要求は高くなります。

背臥位と立位で上肢挙上角度を比較してましょう。

「背臥位よりも立位で上肢挙上角度が低い」
この場合、セラピーの優先順位は随意運動<姿勢制御プログラムと考えます。

大脳皮質からの経路

大脳皮質からの経路を確認しておきましょう。

・観察される現象
・神経システム

この整合性を考察することは、セラピーに根拠を持つ上でも大切です。

「脳」や「脊髄」起因する病変部位は、各ケースで異なるかと思います。

臨床経験と医学情報との整合性を高めるは、セラピーの再現性につながります。

簡単ではないかもしれませんが、一症例ごと丁寧に考察していくことが大切です。

【予測的姿勢調整】経験・学習・記憶

これは予測的姿勢調整を捉えることが難しい理由の一つです。

つまり、個別性をいかに理解するかに尽きます。

病前に手作業を職としていた方とそうでない方とでは、手の巧緻性に違いがあるはずです。

弦楽器演奏者と未経験者では、明らかなに手の器用さには違いがあるでしょう。

そのような経験・学習・記憶をベースとした個別性の上に、予測を捉えなければなりません。

「予測」を捉えるには、趣味嗜好、職業、意欲、価値観など広い視点で対象者を理解することが大切なのかもしれません。

まとめ

今回は、【予測的姿勢制御】姿勢の神経システムを考えるというテーマで書きました。

姿勢運動を支える神経システムの理解は、セラピーを効率的に展開するヒントとなります。

難しさもありますが、個々のケースにあわせて考察していくことが大切と考えます。

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.J Massion .Acquisition of anticipatory postural adjustments in a bimanual load-lifting task: normal and pathological aspects.Exp Brain Res. 1999

2.高草木 薫,【ニューロリハビリテーションにおけるサイエンス-臨床と研究の進歩】 運動麻痺と皮質網様体投射,脊椎脊髄ジャーナル,2014

3.Jean Massion et al.Why and how are posture and movement coordinated?,Prog Brain Res. 2004

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