姿勢制御システムにおける頭頚部の重要性

中枢神経障害によりさまざまな姿勢運動の問題が生じます。

・抗重力活動の低下
・姿勢保持の難しさ
・麻痺による運動障害

これらの問題は、個別的な分析を求められることが多く、ベースとなる姿勢制御システムの理解が不可欠と考えます。

・頭部アライメントの非対称性
・不安定な頭頸部コントロール
・無視、注意障害の影響

特に頭頸部に着目すると上記のような臨床像を経験します。

本日は、姿勢制御システムにおける頭頚部の重要性について考えていきます。

姿勢制御と運動制御

姿勢の2つの主要な機能[1]が示されています。

・抗重力機能
・外界とのインターフェース

ボディスキーマの更新には、多重感覚入力が重要です。

頭頸部は視覚・頚部筋の体性感覚・前庭の感覚情報に関わります。

荷重感覚とあわせて、垂直性(まっすぐ)、正中性(真ん中)の知覚に影響していることが考えられます。

姿勢の機能を支えるのは、ボディスキーマのリアルタイムな更新であり、各体節のフィードバックなどが精密に貢献していることがわかります。

姿勢オリエンテーションと頭部の制御

姿勢オリエンテーションへの視覚・前庭のセンサーを持つ頭部[1]の重要性が示されています。

僕らは、頚部のわずかな傾きにも、すぐに気づき感じることができます。

意識することなく、垂直性(まっすぐ)、正中性(真ん中)を知覚しているのです。

これらは中枢神経系によってモニターされている結果と言えます。

発達過程から頭頸部の優位性が示されていることからも、姿勢オリエンテーションの分析を進める上で頭頸部の評価は大切と言えます。

固有感覚性の姿勢連鎖

固有感覚性の姿勢連鎖について[1]について示されています。

姿勢は多重感覚入力による結果として表現されるものと考えると分析の視点が広がります。

例えば立位姿勢を考えてみます。

支持基底面である足底から観察していくことが一般的です。

これは、足底の感覚・下肢筋の体性感覚に重み付けした観察です。

では、頭頸部から観察するとどうなるでしょうか。

視覚・前庭に重み付けした観察となります。

・下から分析:支持基底面から
・上から分析:頭頸部から

感覚連鎖の観点で姿勢分析を進めるとき、「上から」「下から」の相互作用を捉え、推論を進めていくことがポイントと考えます。

参照フレームとしての役割

姿勢保持のためには、自分の身体が外部環境に対してどのような位置関係になっているかを理解する必要があります。

つまり、身体のフレームを知っていなければなりません。

そして、フレームを参照し、「重力」に適応し、姿勢を安定します。

ここでは、外部環境との参照フレームとして、頭部の安定化が強く関連していることがわかります。

つまり、視覚と耳石は頭部からの姿勢オリエンテーションに非常に重要であることがわかります。

・頭部アライメントの非対称性
・不安定な頭頸部コントロール
・無視、注意障害の影響

上記の影響により姿勢保持に難しさのあるケースは、頭頸部のセラピーの優先性が高い可能性があると考えます。

【視覚】垂直性の知覚

主観的な視覚の垂直性を評価することも有用です。

「傾きはどうですか?」と聞いてみましょう。

頚部は傾いているにもかかわらず「まっすぐですよ」と主観的な表象を訴える方も経験します。

客観的評価と主観的評価の整合性を評価することは重要です。

頭頸部の筋肉

頭頸部の筋肉群になります。

粘弾性や短縮など左右差を確認しましょう。

一側のみの筋活動では、側屈あるいは回旋の非対称な運動につながりやすいです。

まとめ

本日は、姿勢制御システムにおける頭頚部の重要性について書きました。

頭頸部の安定性は、視覚・前庭の感覚情報の観点からも重要と言えます。

頭頸部の重要性を理解し、姿勢分析を進めていけると推論の幅が広がると考えます。

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.Jean Massion.Postural control systems in developmental perspective.Neurosci Biobehav Rev.1998

2.Alain P Yelnik et al.Perception of verticality after recent cerebral hemispheric stroke.Stroke.2002

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