立ち上がり動作の4相を考える
立ち上がり動作はセラピーの課題となることが多いです。
・トイレから立ち上がる
・ベッドから立ち上がる
日常生活では、さまざまな環境から立ち上がり動作が行われます。
「立ち上がりにくい」
「立つのが怖い」
これら立ち上がり動作の制限は、日常生活の制限につながります。
何気なく眺めていても主要問題点をみつけることは難しいかと思います。
立ち上がり動作のシークエンスから、4相の特徴を捉えていきましょう。
立ち上がり動作のシークエンス(4相)
立ち上がり動作の4相[1]が示されています。
各相のはじまりと終わりをしっかり理解しておきましょう。
広い(殿部と足底)→狭い(足底)
安定した姿勢から不安定な姿勢となるため、相の移行とともに姿勢制御の要求は高まります。
矢状面
前額面
水平面
臨床場面では3次元での動作分析が大切です。
「○相の△がうまくいかないから立つのが大変」
このように表現できればセラピーのターゲットを絞ることができます。
各相の特徴を捉え、いつ、どこで、どのように動きの問題が生じているか推論していくことが重要と言えます。
次に臨床場面で遭遇する問題点を各相で考えていきます。
フェーズ1 屈曲相
座位姿勢から体幹を屈曲していく相です。
「前に屈むと倒れそう」
このような訴えをよく経験します。
・骨盤前傾の不十分さ
ここは鑑別しておくと良いかと思います。
また、麻痺側肩甲骨・上肢のコントロールが不十分で「肩から崩れてしまう」ような方もいます。
その場合、麻痺側肩甲帯・上肢を援助することで屈曲相は容易になることを経験します。
フェーズ2 離殿相
骨盤前傾から殿部はベッド面から離れ、足部へ荷重が移る相です。
この相は臨床場面で課題となることが多いかと思います。
・麻痺側足部の内反により、足底接地ができない
・麻痺側ハムストリングスの過活動により、足部が後方にずれてしまう
非麻痺側の過活動が、麻痺側の足底接地をより難しくしている場合もあります。
麻痺側だけではなく、非麻痺側との関連性を分析していくことが重要です。
例えば、麻痺側の大腿四頭筋の働きを援助し、非麻痺側の上肢の過活動が軽減するか、麻痺側ハムストリングスの過活動が軽減するか、といった具合に検証していきます。
足部が支持基底面として機能するための条件を分析していきましょう。
フェーズ3 伸展相
足部から膝・股関節・体幹と荷重は伝わり、抗重力伸展のオリエンテーションが重要な相です。
・正中性
臨床的には、体幹の伸展する方向が大切だと考えます。
・左右どちらかに傾いて伸びる
姿勢は傾いていても「まっすぐ伸びているよ」と、傾きの知覚が不十分なケースも経験します。
体幹を援助して、抗重力伸展のオリエンテーションをガイドしていくことが大切です。
その際、体性感覚、前庭、視覚の影響を分析し、不足している感覚情報を推論していくことが重要と考えます。
フェーズ4 安定期
立位の姿勢制御が求められる相です。
・徐々に膝関節が曲がってくる
このように、まっすぐ立っていられないこともあるかと思います。
股関節の伸展角度は確認しておくとよいかと思います。
・姿勢制御の問題
セラピーのターゲットを絞る上で、ここの鑑別は重要です。
個人・課題・環境の相互作用
立ち上がり動作を考えるうえで、大切な要素です。
Individual:4相のコントロール
Environment:座面の高さ、手すり位置
ここでは、個別性(Individual)の分析から、立ち上がり動作の制限を解決していくことが重要と考えます。
・車椅子(の立ち上がり動作)
・ベッド(の立ち上がり動作)
結果的に、さまざまな環境での立ち上がり動作が安定できれば、効率よく動きの問題を解決できます。
まとめ
今回は、立ち上がり動作の4相を考えるというテーマで書きました。
日常生活を考えても効率のよい立ち上がり動作は非常に重要です。
4相のシークエンスを捉え、アプローチへつなげていけると良いかと思います。
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。
References
1.M Schenkman et al.Whole-body movements during rising to standing from sitting.Physical Therapy.1990