腹横筋と多裂筋の働き

体幹の深層筋である腹横筋と多裂筋の理解は大切です。

これら筋群は、脊柱の分節的な安定に貢献し、四肢の効率的な動きを支えています。

・腕を伸ばすと身体が傾く
・手を挙げると身体が不安定となる
・腰の痛みからお腹に力が入りくい

深層筋の働きの弱さ・タイミングの遅れは、四肢との動きの関連性を捉えることで理解が深まります。

はじめに、筋肉について確認していきます。

グローバル筋とローカル筋

腹横筋と多裂筋は、ローカル筋に分類されます。

ローカル筋の働きに弱化やタイミングに遅れがあると、どのようなことが考えられるでしょうか。

姿勢の乱れや傾きをグローバル筋の働きによって代償する可能性があります。

グローバル筋の持続的な過活動が、痛みにつながっている場合、セラピーターゲットはローカル筋となります。

ローカル筋の働きを高めた結果、グローバル筋の過活動がどのように変化するかは、セラピーの大切なポイントです。

肩関節の運動方向と腹横筋の働き

肩関節を素早く動かすことは、体幹筋の活性化につながります。

この知見をセラピーに取り入れることは、アプローチを考える上で大切です。

・腹横筋は肩関節の運動に先行して働く
・腹横筋は肩関節の運動方向に関係なく働く

腹横筋に関して、上記2点は大切な視点です。

体幹の不安定性を捉える上で、リーチ動作の運動方向に着目することは重要と考えます。

多裂筋の役割

多裂筋は、仙骨部から頭側へと位置し、小さな動きの制御に貢献しています。

また、多裂筋の浅層と深層の役割に違いがあることは重要な視点です。

深層に存在する多裂筋は、臨床的には評価が難しいかもしれません。

そのため、小さな動きの変化を見逃さないことが重要であると言えます。

動きの速さ、大きさは、多裂筋の働きを推論する上で大切なポイントとなります。

中枢神経系による予測的な姿勢調整

四肢を動かすことに伴う予測される不安定さを補うことで安定性は維持されます。

中枢神経系によって、姿勢の乱れや傾きは最小限に制御されています。

中枢神経系に損傷を受ける脳卒中者は、姿勢保持に努力を要し、四肢の動きが制限されることも少なくありません。

・食事:箸操作に伴い、姿勢が傾く
・着替え:シャツの袖通しに伴い、姿勢が傾く
・洗濯干し:手を伸ばすと、姿勢が傾く

姿勢の傾きが大きく、姿勢調整に遅れがあると、転倒につながる可能性もあります。

セラピー効果を日常生活につなげることが大切と考えます。

まとめ

本日は、腹横筋と多裂筋の働きについて書きました。

体幹の深層筋である腹横筋と多裂筋の働きは、臨床的には難しいかもしれません。

肩関節の動き、中枢神経系の影響、日常生活への汎化、このあたりは大切な視点と考えます。

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.Akuthota V, Nadler SF.Core Strengthening.Arch Phys Med Rehabil.2004

2.Paul W Hodges.Is there a role for transversus abdominis in lumbo-pelvic stability?.Manual Therapy.1999

3.David A MacDonald et al.The lumbar multifidus: does the evidence support clinical beliefs?.Manual Therapy.2006

4.Paul W Hodges,et al.Contraction of the Abdominal Muscles Associated With Movement of the Lower Limb.PhysicalTherapy.1997

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