【リーチ動作】皮質脊髄路と網様体脊髄路

姿勢・運動を制御するシステムの損傷を伴うと、手足の運動と姿勢調整は働きにくくなります。

「手を伸ばして物をとる」このような一見簡単と思われる動作もその一つです。

・体幹の傾きを強めリーチ動作をする
・指に過剰に力が入っている
・腕が重たく伸びない

片麻痺患者さんは多様な症状を呈します。

背景となる神経システムを考えていきます。

内側運動制御系と外側運動制御系

内側運動制御系と外側運動制御系[1]について示されています。

脳卒中により外側皮質脊髄路に障害を受けると、手の操作性を作り出すことが難しくなります。

加えて、体幹・近位筋に関与する網様体脊髄路に障害を受けると、適切な抗重力活動を保つことが不十分となります。

多くの患者さんは、手の動きにくさ、大変さを訴えます。

しかし、姿勢筋の弱さについては気づきにくい(感じにくい)ことが多く、患者さんが訴えることは少ないかと思います。

セラピストは、背景にある近位筋の要素を分析し、活性化できるが重要です。

姿勢・運動観察は、近位筋と遠位筋の協調性・関連性を捉えつつ進めることが大切と考えます。

【姿勢】体幹の安定性

姿勢筋の神経駆動の弱さは、適切な抗重力活動の難しさにつながります。

脊柱の分節運動がスムーズに働くことは、リーチや手の動きの協調性に大切です。

・前額面(屈曲伸展)
・矢状面(側屈)
・水平面(回旋)

体幹の動きを三次元の視点で観察し、近位筋と遠位筋の運動のつながりを捉えてましょう。

網様体脊髄路と手の機能回復

網様体脊髄路と手の機能回復に影響する可能性[2]について示されています。

このことからも、皮質脊髄路と網様体脊髄路の協調性を捉えることが重要であると言えます。

セラピーにおいては上肢課題の展開を考えさせられます。

・姿勢は座位or立位のどちらを選択するか
・アプローチは近位or遠位どちらから進めるか
・リーチの範囲、方向の設定はどうするか

いずれも個々に応じた課題・環境設定が必要ですが、背景にある神経システムを考えながら展開していけると意思決定に役立ちます。

臨床経験

臨床経験です。

過去に歩行は自立しているものの上肢機能の回復に課題を呈している片麻痺患者さんを経験しました。

麻痺側上肢の前方リーチは、肩・肘関節の屈曲活動を強め、空間での肘関節伸展が不十分でした。

麻痺側上肢の空間保持が難しいため、対側腰部筋に過活動がみられ、固定性を強めていました。

目標物へ手部を到達させるため、固定的な体幹を屈曲させ代償していました。

骨盤の運動性は制限を受け、ゆっくりと座るような課題で骨盤のコントロールに難しさにもつながっていました。

近位筋と遠位筋の影響を考えさせられる患者さんでした。

まとめ

本日は、【リーチ動作】皮質脊髄路と網様体脊髄路についてまとめました。

中枢神経障害を抱える患者さんをセラピーしていく上で、背景となる姿勢・運動システムを考えることは重要です。

システムを捉えることは難しいかもしれませんが、臨床像とシステムを照らし合わせながら仮説検証を繰り返すことが大切と考えます。

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.高草木 薫,大脳基底核による運動の制御.臨床神経学.2009

2.Stuart N Baker.The primate reticulospinal tract, hand function and functional recovery.J Physiol.2011

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