【片麻痺の肩の痛み】 低緊張と過緊張
脳卒中後の麻痺により筋肉の安定性が生じると、肩関節の動的制御が損なわれます。
不安定な肩関節は、痛みにつながることを多く経験します。
・立ち上がり動作の非対称性
・起居動作の難しさ
肩の痛みは、上肢機能の回復を妨げ、痛みを回避するために全身的な動きの非効率性にも影響します。
脳卒中後の肩関節筋は、低緊張から過緊張へ回復過程に応じて変化するため、各ステージの理解が大切です。
はじめに、インピンジメントについて肩の構造とあわせて確認していきます。
肩の構造と棘上筋腱のインピンジメント
肩甲骨の関節窩と上腕骨頭の位置関係が、最適に動的制御されていることが重要です。
肩関節の安定に寄与する筋群に低緊張・過緊張を呈する場合、これらの制御に乱れが生じている可能性があります。
痛みにつながるインピンジメントを防ぐことが大切です。
・棘上筋腱
・上腕二頭筋腱長頭
インピンジメントの可能性がある場合、上記の2つの評価は必須です。
・いつ痛みを生じるか
・どうしたら痛みは軽減するか
・不足している運動はないか
・過剰な運動はないか
肩関節は構造的に不安定なため、ゆっくりと動かし、負担とならないアプローチが重要です。
弛緩期の肩関節と下方亜脱臼
・上肢挙上は難しい
・肩甲骨は下制し、体幹は麻痺側へ傾いている
発症早期や重度ケースでは、肩関節の下方亜脱臼につながるリスクが高いです。
筋肉の影響に加え、神経損傷のケアも大切な視点です。
片麻痺者は、「腕が重たい」と表現し、ときに上肢を置き去りにしたまま動いてしまうこともあります。
早期からポジショニングやシーティング、上肢管理の教育を実践する必要があります。
肩関節の運動は、肩甲骨の関節窩と上腕骨頭の位置関係を修正し、運動角度にあわせた内外旋の制御、筋活動(僧帽筋・前鋸筋)の活性化が重要と考えます。
痙縮による肩甲骨の回旋制限
回復過程にあわせて、肩関節の筋活動パターンは変化します。
痙縮の影響を受ける上肢は、屈曲内転内旋の運動パターンを呈していることが多いです。
挙上している
後退してる
【肩関節】
内旋している
【上肢挙上】ローテーターカフの役割
ローテーターカフは、肩関節運動におけるインナーマッスルの役割を果たします。
体幹で言う腹横筋のような働きです。
上腕骨頭の安定に重要であり、肩運動時の内外旋制御には特にポイントとなります。
脳卒中後リハビリでは、肩関節の内外旋制御が難しいことを多く経験します。
ローテーターカフの働きを活性化することは重要と言えます。
【上肢挙上】肩甲骨周囲筋の活性化パターン
上肢挙上による肩甲骨周囲筋の活性化パターン[3]が示されています。
・僧帽筋
・前鋸筋
上記の2つの筋は肩甲骨の動的安定性に重要であり、角度応じた活性化がポイントとなります。
片麻痺者においては、短縮、不活性を伴うことも多く経験します。
上肢挙上にあわせて、肩甲骨の上方回旋を引き出し、関節窩と上腕骨頭の安定性を保つことが重要と言えます。
まとめ
本日は、【片麻痺の肩の痛み】 低緊張と過緊張というテーマで書きました。
脳卒中後の肩関節筋は、回復過程に応じて低緊張から過緊張へと変化します。
個々の病態や代償動作を捉え、経過に合わせて肩の痛みを起こさないことが大切と考えます。
以上になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも明日の臨床につながれば幸いです。
References
2.S A Hess.Functional stability of the glenohumeral joint.Man Ther. 2000
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