フィードフォワード制御と体幹

手足の動きによって生じる不安定性さを補うため、体幹筋は安定を維持するために働きます。

フィードフォワード制御とは「動作の準備」です。

リーチ動作を例に考えてみます。

・対象物の視覚認知(距離・形状・位置)
・上肢リーチ(軌跡・手の構え[手指・手関節]・タイミング・強さ)

運動開始前〜運動直後のフェーズは、フィードフォワード制御を意識した分析が大切と考えます。

リーチ動作を課題とする片麻痺患者さんは、体幹姿勢の乱れ、不安定さ、非対称性を呈していることを多く経験します。

これら現象の背景にある中枢神経システムの理解が重要と言えます。

中枢神経系によるフィードフォワード制御

中枢神経系によるフィードフォワード制御について[1]示されています。

・フィードフォワード制御
フィードバックでは説明できない速さで腹横筋の動員がみられる

 

神経の伝達速度の視点で考えると、「体幹の働きはフィードフォワード」と考えざる得ないわけですね。

臨床的には、病変により影響を受けている神経システムと温存されているシステムを鑑別していくことが大切と言えます。

神経システムの知見は、臨床推論を進めるための支えとなります。

姿勢により異なる腹筋の動員

「体幹の姿勢」を考えます。

体幹筋の働きやすい姿勢を選択する

フィードフォワード制御の観点でリハビリを考えるポイントです。

とはいえ、誰もが立位で課題を進めることは難しいかのも現実かと思います。

座位でリーチ課題を練習するときには、座面の高さを高くするなどの工夫があると良いかもしれません。

姿勢によって体幹筋の動員は変化することを理解し、姿勢選択をしましょう。

フィードバックとフィードフォワードの相互作用

フォードフォワード制御とあわせて、フィードバック制御も重要です。

リーチ動作を例に考えてみます。

・対象物に近づき把握前の微調整
・対象物の把握

リーチ動作のパターンに応じて、筋紡錘からのフィードバックにより制御されます。

大切なのは、どちらか一方が働いているわけではなく、相互作用として働いていることがポイントです。

感覚と運動の不一致により生じる感覚障害

運動には、過去の記憶や経験を基づく「予測」があり、得られる感覚(フィードバック)と不一致がないのがほとんどです。

ペットボトルへのリーチ動作を例にします。

「ボトル一杯かと思いきや空だった」みたいな経験、一度はあるかと思います。

持ち上げた瞬間、ぐいっと急に持ち上がってしまう感じです。

中枢神経は常にフィードバックとフィードフォワードシステムを作動し、不一致があればすぐに検知できる状態にあることがわかります。

感覚障害を捉える上でも、神経システムの理解が大切と言えます。

まとめ

本日は、フィードフォワード制御と体幹というテーマで書きました。

臨床では姿勢運動を観察分析し、アプローチを行います。

臨床推論を深めるため、神経システムの理解は重要と考えます。

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.P W Hodges,et al.Contraction of the Abdominal Muscles Associated With Movement of the Lower Limb.PhysicalTherapy.1997

2.Donna M Urquhart et al.Postural activity of the abdominal muscles varies between regions of these muscles and between body positions.Gait Posture.2005

3.Laurie Lundy-Ekman,Neuroscience – E-Book: Fundamentals for Rehabilitation.Elsevier Health Sciences, 2013-p259

4.CS Mc Cabe ,et al. Simulating sensory-motor incongruence in healthy volunteers: implications for a cortical model of pain.Rheumatology (Oxford). 2005

あわせて読みたい