片麻痺症例における歩行開始

片麻痺症例の歩行は、

・麻痺側の立脚期の不安定性
・麻痺側の遊脚期の引っかかり

など、歩行周期のどこに転倒の危険性があるのかアセスメントすることが重要です。

 

「転びそうで怖い」「長く歩くと痛みが出る」「疲れてしまう」
このような患者さんの訴えは、「早くどこが問題か見極めてほしい」というような状況かと思います。

 

セラピー時間は限られていますし、負担を強いることなくセラピーターゲットを絞り込むことが大切です。

 

歩行開始を分析することで、多くの有益な情報を得ることができます。

 

今回は片麻痺症例における歩行開始のポイントをまとめていきます。

片麻痺症例における歩行開始の非対称性

歩行開始に重要なのは、「一歩目はどちらか」です。

 

皆さんは、自分が一歩目はどちらから出すか答えられますか。

 

試しに、立位姿勢から一歩前に踏み出してみましょう。

 

どちらの足から踏み出したか。

 

それはなぜですか。

 

反対側からはできますか。

 

できるのであれば、動きやすさはどうですか。

 

「左右そんなに変わらない」と感じるかたも多いかもしれません。

 

健常人に比較し、片麻痺症例は、歩行開始の左右差や非対称性が顕著かと思います。

 

片麻痺症例の歩行開始に関する論文[1] から臨床において大切なポイントをおさえましょう。

Hemiparetic patients showed differences with respect to the starting limb:when starting with the nonaffected leg, the swing period and step length was shorter and the center of pressure displayed a more marked medio-lateral sway with no corre- sponding initial movement of the center of mass; when starting with the affected leg the movement pattern of the center of pressure and center of mass was comparable to that of normal subjects.
片麻痺患者は、開始肢に関して違いを示した:非麻痺側下肢から開始した場合、スイング期と歩幅はより短く、圧中心はより顕著な中外側の揺れを示し,対応する重心の初期移動はみられない。麻痺側下肢から開始した場合、圧中心と重心の動きのパターンは、正常な被験者と同等であった。

日々の臨床において、麻痺側下肢から一歩を出す方は多いのではないでしょうか。

 

理由は、

麻痺側下肢より非麻痺側下肢のほうが支えやすい
→非麻痺側を支持脚とし、麻痺側下肢を一歩出す

このような、バランス戦略をとること方が多いためと考えます。
反対に、非麻痺側下肢から一歩目を開始する場合、麻痺側はより機能的であると仮説を立てることができます。

 

さらに、「一歩目はどのように出すか」も大切です。

歩行開始において

・遊脚時間
・歩幅
・重心の揺れ

これらは注意深く観察することで、セラピー前後の評価指標にもなります。

歩行開始の前、立位姿勢から予測しよう

さらに、立位姿勢から予測する習慣をつけると動作分析力は向上します。

 

予測するということは、仮説を立てるということになります。

 

「どちらの足をどのように出すか」

 

自分の仮説に対して、繰り返し検証していくとセラピーの優先順位を決めるトレーニングになります。

 

歩行開始は、集中して観察し見過さないようにできると良いかと思います。

まとめ

片麻痺症例において歩行開始の「一歩目はどっちか」「どのように出すか」「なぜか」

この繰り返しは、分析力を高め、セラピーの優先順位を見極めていく大切なポイントだと考えます。

 

 

以上になります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

少しでも明日の臨床につながれば幸いです。

References

1.S Hesse,et al.Asymmetry of gait initiation in hemiparetic stroke subjects.Arch Phys Med Rehabil.1997

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